屋上PVとEVの組み合わせで―CO2排出量95%削減も:国立環境研究所
(2021年1月14日発表)
(国)国立環境研究所は1月14日、建物の屋根に太陽電池(PV)を設置し電気自動車(EV)を余剰電力の貯蔵装置として使用すれば都市部での電力消費と車によるCO2排出量を最大95%削減できると発表した。東京都区部や札幌、広島など9都市を対象に試算した結果明らかになった。2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す政府目標を達成するための有力な手法になるとみている。
日本では都市部でのCO2排出が全体の50%を超えており、都市部の排出量削減が温室効果ガス排出ゼロ社会実現に向けての大きな課題とされている。このため発電量が不安定な太陽光発電の弱点を、今後急速な普及が期待される電気自動車のバッテリーを電力貯蔵に利用して解決する新しい電力・モビリティーシステムの導入がCO2排出の有力手法として期待されている。
そこで同研究所は建物の屋根面積の70%を利用して太陽電池を設置、日中に発電された電力を電気自動車のバッテリーに蓄えて必要に応じてコミュニティーの電力使用に回せる分散型電源システムの導入を前提にCO2削減効果を調べた。その際、全ての建物の屋根面積の最大70%を太陽電池の設置に利用することや、個人所有の乗用車は全て電気自動車になることなどを想定、CO2排出削減効果や経済性などについて試算した。
その結果、電気自動車に必要な電力も含む都市の電力需要の53~95%を賄うことができ、車と電力消費に伴うCO2排出の54~95%が削減できることが分かった。また、東京都区部や産業都市の川崎以外では年間消費電力の100~200%の電力を屋根上太陽電池による発電で賄えるほか、ガソリンと電気代にかかるエネルギーコストを26~41%削減できる可能性もあり、全ての指標が大幅に改善できるという。
こうしたシステムの実現には、太陽光発電と電気自動車を組み合わせてコミュニティーでの太陽光発電電力の自家消費を最大化させる分散型電源システムが欠かせない。そのため同研究所は「それを可能とするさまざまな規制改革を行う必要がある」と話している。