海洋酸性化で減る生物多様性―CO2濃度正常化で回復も :筑波大学
(2021年1月15日発表)
筑波大学は1月15日、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)によって海洋酸性化が進むと海の生物多様性が失われるが、CO2濃度が下がれば数カ月で生態系が回復するとの実験結果を発表した。CO2濃度が異なる海域で観察した生物群集の変化をもとに明らかにした。海洋中CO2濃度が適切に下がれば生態系が回復することも確認、海洋酸性化に対する生態系管理も可能になると期待している。
筑波大生命環境系のハーベイ・ベンジャミン助教の研究グループが、伊豆諸島の式根島周辺で海底からCO2ガスが噴出している高CO2海域と通常海域を対象に正方形の板を設置し、板に付着する生物群集の変化とそのメカニズムを調べた。
その結果、高CO2海域では生物群集の光合成は増大するものの、板の表面は小型藻類で覆われてバイオマスや生物多様性は低下していた。また、板に付着した生物が作り出す構造的な複雑性も失われた。一方、小型藻類によって覆われたこの板を通常海域に戻すと、大型藻類が増えて数カ月で通常海域の一般的な生物多様性が回復した。
この結果から、研究グループは「酸性化によって藻類の生態系が変化しても、海洋中のCO2を適切なレベルに戻せば、藻類群集の構造も元に戻る」として、生態系の回復力の高さが示されたとみている。