トマト祖先種のゲノムを解読―新品種開発の強力な手段に:筑波大学ほか
(2021年1月27日発表)
筑波大学、国立遺伝学研究所などの研究グループは1月27日、世界中で栽培されているトマトの祖先にあたる2種類の野生トマトのゲノム(全遺伝情報)解読に成功したと発表した。栽培種に比べて塩害や病気に強い、糖や有機酸、香気成分を多く含むなどの優れた性質を持つ野生トマトの遺伝情報が解読できたことで、より育てやすく味や香りのよい新品種を生み出すのに役立つと期待している。
筑波大と遺伝研のほか、(公財)かずさDNA研究所とトキタ種苗(株)が参加した研究グループがゲノム解読の対象にしたのは、現在栽培されているトマトとの交雑が可能な2種類の祖先種。いずれも塩害などの環境ストレスに強いといった、栽培種にはない優れた特長を持っている。
動物や植物などの遺伝情報はDNA上に並んだ4種類の化学物質「塩基」の配列で記録されているが、研究グループは今回、野生種のゲノムに含まれる8億個の塩基対を全て高精度に解読した。これらの塩基配列には、トマトが体内でたんぱく質を作る時に必要となる遺伝子がそれぞれ7万個以上含まれていると予測できた。このうち約3万個は、トマトの体内で実際に働いていることが分かった。さらに、これらの遺伝子を栽培種と比較したところ、一方の野生種には栽培種にはない遺伝子が6千個以上、もう一方の野生種には1万個以上含まれていることが明らかになった。
今回解読したゲノム情報は、遺伝研が運営するDNAデータバンク(DDBJ)やかずさDNA研究所のデータベース(Plant GARDEN)で公開している。