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“ギャンブル”で働く脳神経解明―報酬量と確率を瞬時に掛け算:筑波大学

(2021年2月5日発表)

 筑波大学は2月5日、ギャンブルなどで確率的に最も得な選択を瞬時にする脳の仕組みの一部を解明したと発表した。脳の神経細胞の活動を0.02秒単位で解析する新手法を開発、サルがジュースをもらう際に一番得な選択をするようもらえる確率とジュースの量の掛け算をしているように活動する神経細胞を突き止めた。新手法は過去のデータの解析にも使え、脳の新たな仕組みの解明につながると期待している。

 宝くじを買う場合、多くの人は当たる確率と当たった場合にもらえる金額をもとに期待値(確率×金額)を計算、期待値の高いくじを選ぶ。筑波大の山田洋助教は脳の中でどのようにこうした計算をしているのかに注目、サルを用いて解明を試みた。

このためにジュースなどの報酬をもらえる確率と量から一番得な選択をするようにサルを訓練し、その選択をする際にサルの脳内で活発に働く神経細胞の活動を調べた。研究では線形代数と多変量解析と呼ばれる二つの数学的手法を組み合わせた新手法を開発、0.02秒単位でとらえた神経細胞の活動を解析できるようにした。この実験の結果、サルが一番得な選択をする際に、脳内の二つの領域「前頭眼窩野中央、腹側線条体」が瞬時に報酬をもらえる確率とその量の掛け算をしているように活動していることが分かった。

新しい解析手法について、山田助教は「統計的な条件を満たせば、どんな神経細胞集団の記録データにも適用可能」と話しており、過去に蓄積された脳活動の記録データの解析に利用することで脳が計算をする際の新たな仕組みの解明につながると期待している。