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無花粉スギの原因遺伝子を同定―地域環境に適した無花粉スギの育種で花粉症対策へ:森林総合研究所ほか

(2021年2月16日発表)

 (国)森林総合研究所は2月16日、新潟大学、筑波大学、基礎生物学研究所、静岡県農林技術研究所と共同で、花粉の形成に異常がある雄性不稔の原因遺伝子の一つを同定したと発表した。今回の研究で得られた知見は花粉症対策への貢献が期待されるという。

 同定したのは、MS1と呼ばれる遺伝子。研究グループはスギの雄花で発現している遺伝子を抽出して、それらの塩基配列を解読した。正常なスギと比較した場合に無花粉スギの雄花では108個の遺伝子で発現が抑制されている可能性が示され、それら遺伝子の塩基配列を詳細に検討した結果、そのうちの一つに塩基配列が欠失して無花粉の原因となりうる変異が認められた。

 人工交配を行って確認したところ、MS1と呼ばれる遺伝子の変異が無花粉の原因であることが分かった。無花粉スギのMS1では塩基配列が欠失するため花粉形成が正常に機能しない。

 MS1遺伝子のこの欠失変異には、つまり無花粉となる変異には、2つの系統があること、さらに天然スギのMS1の塩基配列調査により、この2つの変異の元になる系統が全国の天然スギ林に広く分布していることが判明した。

 スギ花粉症対策の一つに無花粉スギの育種があるが、育種には2~3年間苗を育てた後に薬剤で雄花の形成を人工的に促し、花粉の有無を確認する検定作業を要する。これに対し、原因遺伝子の塩基配列を指標にすれば、人工交配や花粉の検定作業を行うことなく地域の環境に適した無花粉スギの検出をいち早く進めることができる。

 2つの変異の元となる系統が多く分布するところでは、無花粉スギがさらに発見される可能性があり、それぞれの地域環境に適応した多様な無花粉スギを探索・発見して育種に活用することもでき、今回の研究成果は花粉症対策への貢献が期待されるとしている。