二酸化炭素の増加による海洋酸性化で微細藻類が海底覆う―微細藻類が他の生物の加入を阻害し生態系の多様性低下:筑波大学
(2021年2月16日発表)
筑波大学は2月16日、二酸化炭素(CO2)の増加によって引き起こされる海洋酸性化により、生態系の多様性が失われ、海底が微細藻類で覆いつくされるようになることが、海底の調査研究や地上実験などで明らかになったと発表した。このような変化が進むと環境の多様性や複雑性が損なわれ、生態系の価値が著しく低下すると警告している。
二酸化炭素による海洋酸性化は、海藻の海中林やサンゴ礁の生育よりも、微細藻類の生育に適した環境へと海洋を変化させる可能性が指摘されている。二酸化炭素濃度の高い条件下では微細藻類の活性が増大し、マット状のコロニーが海底を覆うまで広がるとされている。
伊豆諸島の一つである式根島には、海底から二酸化炭素が噴き出すCO2シープと呼ばれる海域があり、二酸化炭素の濃度勾配が生じている。
そこで研究グループは、高二酸化炭素濃度下における海洋生態系の変化の解明を目指し、今回この海域を対象に調査・実験を実施した。微細藻類のコロニーの生物相や海底付近のpH・溶存酸素濃度を調べたり、生物付着板を設置した現場実験や海底生態系の実験室再現実験などを試みたりした。
その結果、海洋酸性化によって微細藻類の生育が促進され、増加した微細藻類によって他の生物種の加入が妨げられることで、生態系の構成の変化(遷移)が停止に至ることを突き止めた。
高二酸化炭素濃度の環境下では、微細藻類は海底を覆いつくし、マット状になって多量の堆積物を吸着する。その内部では、微生物群集の活動により酸素濃度やpHが低下し、他の生物種の加入や成長を阻害する障壁となって、元の状態には戻りにくくなる。
今回の研究により、高二酸化炭素濃度下における微細藻類コロニーの広がりが、こうした不連続な変化を引き起こすことが明らかになったとしている。