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新物質で大きな磁気冷凍効果―水素の液化・貯蔵に応用も:物質・材料研究機構

(2021年2月19日発表)

 (国)物質・材料研究機構は2月19日、永久磁石による小さな磁場の変化だけで効率よく冷凍効果を発揮する新しい磁気冷凍現象を発見したと発表した。希土類元素の一つであるホルミウム金属を利用、クリーンエネルギーとして期待される水素が液化する極低温領域で大きな磁気冷凍効果が実現できる。水素を液化・貯蔵するためのシステムを低コストで実現する道が開けると期待している。

 磁性体を構成する極微の磁石「磁気モーメント」の向きがそろって磁化した状態から不規則な状態に変化する過程で、周囲の熱を奪う磁気冷凍効果は従来から知られている。物材研は今回、磁場のない状態でも磁気モーメントの向きが少しずつ変わってらせん状態に配列しているホルミウム金属に注目、特定の強さの磁場を外からかけ、その強度を変化させたときに磁気モーメントがどう変化するかを調べた。

 その結果、ホルミウム金属では特定の強度の磁場付近で外部磁場の強度を少し変えるだけで磁化が急速に進む現象が起こり、周囲の熱を奪う大きな磁気冷凍効果が起きることが分かった。27.3K(-248.85℃、Kは絶対温度)の極低温下で磁場の強度を0.4T(テスラ、磁場強度の単位)から0.6Tに変えただけで、従来より一桁程度大きな磁気熱量効果が得られた。

 また、この効果は水素が液化する-253℃付近から-213℃付近の広い温度範囲で起きることも確認、この温度範囲で外部磁場の強度を永久磁石で発生可能な小さな磁場によって変化させるだけで動作させることが可能という。

 これまで代表的な磁気冷凍材料として知られるホルミウムアルミニウム金属間化合物では、磁気モーメントの向きをそろえるために超伝導磁石を用いた5T程度の強い磁場が必要だった。そのため電源設備の配置スペースやランニングコストの確保が大きな問題になっていた。

 今回の成果について、物材研は「小規模な液体水素ステーションや輸送車両等で活躍が期待できる低コストでコンパクトな液体水素貯蔵・輸送システムの実現に向けて新たな選択肢が生まれる」と話している。