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大気中のCOを前処理なしに高濃度メタンに直接転換―CO吸収とメタンへの転換機能併せ持つ触媒を開発し実現:産業技術総合研究所

(2021年2月25日発表)

 (国)産業技術総合研究所は2月25日、大気中に放出されている二酸化炭素(CO2)を回収し、都市ガスの原料となる高濃度のメタン(CH4)を合成する新技術を開発したと発表した。大気中からCO2ガスだけを分けて取り出す「前処理」を不要としたもので、CO2回収・利用の省エネルギー化や低コスト化が期待されるという。

 温室効果ガスであるCO2の大気中濃度を下げるため、COを燃料や有用化合物に転換して再利用する技術の開発が精力的に進められている。触媒を使ってCO2と水素(H2)を反応させ、メタンを合成する技術はその一つだが、これまでこの反応では酸素や窒素ガスに混ざったCOを回収してあらかじめ100%近い濃度にする必要があり、この前処理に多くの熱エネルギーを要していた。

 研究グループは今回、CO2を吸収する機能と、吸収したCO2を水素と反応させてメタンに転換する機能の2つの機能をもつ二元機能触媒を作製、CO2分離回収過程を必要とせずに、希薄なCO2を直接回収してメタンに転換する技術を開発した。

 触媒中のナトリウム、カリウム、カルシウムがCO2を回収する機能を持ち、ニッケルがCO2をメタンに転換する機能を持つ。この2元機能触媒を用いた反応器にガスを切り替えて導入すると、低濃度CO2の触媒中への選択的回収と、回収したCO2の水素雰囲気下での炭化水素類への転換が交互に行われる。

 産業分野からの排出を想定した濃度5~13%のCO2と、大気中のCO2 を想定した400ppm(ppmは100万分の1)のCO2、さらに希薄な100ppmのCO2を用いて転換試験をしたところ、いずれもメタンが迅速に生成し、最大で体積分率で1,000倍以上高濃度のメタンへ直接転換することができた。

 大気中には約20%の酸素が含まれており、酸素による触媒の劣化が懸念されることから、酸素によるCO2の選択回収時の影響を調べたところ、若干の性能劣化は認められたものの、酸素を含む雰囲気でもCO2を回収でき、回収したCO2を高効率でメタンに転換出来ることが分かった。

 今後は触媒重量当たりのCO2回収量とメタン生成量の高い触媒を開発し、実用化を目指したいとしている。