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サンゴ生育阻害の仕組み解明―砂によるリン蓄積が影響:北里大学/産業技術総合研究所ほか

(2021年3月17日発表)

 北里大学、(国)産業技術総合研究所、琉球大学の研究グループは3月17日、市街地や農地から海に流れ込む高濃度のリンがサンゴの生育に欠かせない骨格形成を妨げていることを突き止めたと発表した。栄養塩が過度に流れ込む海域でサンゴが減少することは知られていたが、そのメカニズムが解明されたのは初めて。サンゴの保全に役立つと期待している。

 研究グループは、市街地や農地に近い沖縄県南部沿岸域とサンゴが比較的多く生息する北部沿岸域で石灰質の砂を採取、その砂とともに造礁サンゴ類のコユビミドリイシを実験室内で約40日間育てた。この間に、砂から海水に溶け出すリン酸塩の濃度が、水に漂う幼生状態のコユビミドリイシの石灰化にどう影響するかを観察した。

 その結果、砂から海水中に溶け出すリン酸塩濃度は、農地などが近い南部沿岸の砂では北部沿岸の砂の場合に比べて2倍以上だった。また、サンゴ造礁に欠かせない石灰化の指標になる底面骨格は、南部沿岸の砂とともに育てると海水のみで育てた場合の3割程度にまで大きく減少。一方、北部沿岸の砂では、その減少は7割程度にとどまった。

 サンゴの主な生息域である熱帯・亜熱帯の島々では、多くの砂が石灰質の炭酸カルシウムで構成されている。この炭酸カルシウムが陸から流れ込むリン酸塩を強く吸着、沿岸域の砂に高濃度で蓄積される。それがサンゴの生育に大きな影響を及ぼしていることが、今回の実験で明らかになったという。

 今回の成果について「沿岸域の蓄積型栄養塩を調べることによって、陸域負荷の大きい場所を特定することが可能になる」と、研究グループはみている。今後はさらに、サンゴの骨格形成を阻害するリン酸塩以外の陸域由来物質について調査を進める。