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ストレス時に血液循環を調節する神経機構を発見―ラットを使った実験で明らかに:筑波大学

(2021年3月30日発表)

 筑波大学医学医療系の研究グループは3月30日、ストレス時に血液循環を調節する神経機構を発見した、と発表した。脳の中心部にある「外側手綱核(がいそくたづなかく)」と呼ばれる領域に着目、ラットを使った実験で分かった。ストレスが原因の一つと考えられている自律神経失調症の新しい予防法や治療法の開発に繫がることが期待されるという。

 ヒトはストレスと向かい合うと、すくんだり、逃げたりするなど、その行動を変化させる。同時に体内ではストレスに対応して様々な生体反応が起こる。例えば、血圧や心拍数などの血液循環を調節する上で重要な働きをする自律神経系が変化する。

 自律神経系には交感神経と副交感神経とがあるが、ストレス環境下ではその自律神経系の活動が変化することで心臓や血管の機能が調節される。

 このため、ストレス環境下での自律神経系の調節機構を理解することが重要な課題となっており、世界中で多くの研究者が研究に取り組んでいる。

 研究グループは今回その一環としてストレス性の刺激によって興奮するニューロン(神経細胞)が存在することが知られている脳の外側手綱核を利用し、ラットによる実験で血液循環の調節機構解明に取り組んだ。

 実験は麻酔をしたラットの外側手綱核を電気的に興奮させるという方法を使って行った。すると電気的興奮によって血圧の上昇と心拍数の低下が観察され、外側手綱核の興奮は自律神経系を介して血圧や心拍数の変化を引き起こしていることが分かった。

 そこでさらに、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きを薬物で抑えてみたところ、外側手綱核の興奮による血圧と心拍数の変化が抑えられた。

 このことから、ストレス環境のもとで脳の外側手綱核が興奮すると、自律神経系を介して血液循環が調節されると共に、その調節をセロトニンが“仲介”しているということが分かった。

 神経機構を明らかにすることはストレス時の生命維持システムなどに繫がることから研究グループはさらに研究を進めている。