光刺激で胃腸間ゲート開閉―ウニに神経伝達回路:筑波大学
(2021年4月5日発表)
筑波大学は4月5日、ウニが胃と腸の間の幽門(ゆうもん)を外からの光刺激で開閉していることを突き止めたと発表した。多くの生物が外界からの光刺激によって体内時計を調節するなどしているが、ウニのような棘皮(きょくひ)動物の研究報告はこれまで十分にはなかった。動物界に広く存在する光応答の進化の過程を解明するのに役立つと期待している。
筑波大下田臨海実験センターの谷口俊介准教授は、卵から成体に成長する途中段階にあるバフンウニの幼生に光を当て観察した。幼生はほとんど透明なため、消化管などの動きを外から直接観察できる。観察の結果、ウニの幼生は光の刺激を受けると、胃の出口である幽門が開くことを見出だした。幽門は多くの動物で胃に含まれている食物の刺激によって制御されるが、今回の観察では食物を摂取する前でも外部からの光刺激によっても幽門が開くことが分かった。
また、ウニの幼生に光を当てたとき、その刺激がどのように伝わっていくかについても詳しく調べた。その結果、光が当たるとウニの脳から神経伝達物質のセロトニンが放出され、その刺激が幽門付近の細胞に伝達されて一酸化窒素を放出、幽門が開くという神経伝達経路があることが明らかになった。
人間は精神的なストレスでお腹の調子が悪くなることがあるように、脳と腸は互いに影響を及ぼし合う脳腸相関はよく知られている。今回の研究では光刺激が脳から腸への伝達に一役買っていることが明らかになった。ウニはヒトと同じ動物界の後口動物に属するため、今後ヒトを含めた脊椎動物でも光によって脳腸相関が刺激される経路が見つかる可能性もあると期待している。