メタボ患者の歯周病に運動療法が効果―口腔内細菌の増減や免疫物質の濃度などを調べ実証:筑波大学
(2021年4月10日発表)
筑波大学の研究チームは4月10日、メタボ患者の歯周病が運動療法で改善するというこれまでの知見を分子メカニズム的に解析した結果、運動療法の効果が実証されたと発表した。歯周病の高リスクグループに対する健康管理の一環として、運動療法の重要性が示されたとしている。
歯周病は、メタボリック症候群の患者に高い有病率が認められている。メタボリック症候群は肝臓においては非アルコール性の脂肪性肝疾患(NAFLD)や肝炎(NASH)といった形で現れるが、研究チームはこれまでの研究で、これらの患者においては、運動療法後に歯周病菌が減少することを見出していた。
今回そのメカニズムを解明するため、運動療法介入前後の唾液成分の分析や口腔内細菌叢(さいきんそう)のゲノム解析を実施し、運動療法が誘導する口腔内環境の改善の分子メカニズムを調べた。
具体的には、歯周病と診断されたNAFLDの中年肥満男性49人を対象に、3か月間の運動療法を実施し、その前後で唾液を収集して、炎症に関わる物質である唾液中の免疫グロブリンA(IgA)、菌体内毒素(LPS)、炎症性サイトカインTNF-α(腫瘍壊死因子-α)、ラクトフェリンを測定、あわせて、口腔内細菌叢のゲノム解析を実施した。
また、中年肥満男の変化性21人を対象に食事療法を実施し、運動療法の効果と比較した。運動療法ではレジスタンス運動、有酸素運動を1回90分、週3回、計12週間行った。
その結果、運動療法を施すと、唾液中の炎症に関わる物質の濃度が減少すること、口腔内細菌の種多様性が増大すること、口腔内細菌のLPS生合成に関わる遺伝子の発現量が減少すること、が明らかになった。
つまり、NAFLD肥満者では、運動療法が口腔内の細菌叢の構成や唾液成分の変化を介して歯周病の改善をもたらすことが実証され、運動療法の重要性が明確になったとしている。