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飲酒歴のない脂肪肝は運動によって改善することを解明―有酸素運動が肝脂肪の蓄積や肝硬度を減少させ、病態関連因子を改善する:筑波大学

(2021年4月12日発表)

 筑波大学医学医療系の正田純一教授の研究チームは4月12日、飲酒歴のない中年の肥満男性に多い「非アルコール性脂肪性肝疾患」患者に対して「有酸素運動」と「食事ダイエット」を3か月実施したところ、肝脂肪の蓄積と肝硬度などが改善したと発表した。適切な運動が生理活性物質の血中濃度を変化させ、関連因子を改善させたとみている。その背景にある分子メカニズムも明らかにした。

 肝臓病はC型肝炎などのウイルス性肝炎や、酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害などがよく知られているが、最近はそれらに関係なく発症する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が注目されるようになった。これらが進行すると肝硬変や肝がんになる恐れがある。

 特に中年男性の肥満は、脂肪性肝疾患を引き起こす重要な要因とされている。治療は体重を減らすことが重要で、多数の研究から運動不足の関係が知られていた。しかし運動が直接体重を減らした事例が少ないことから、医療現場では懐疑的にみられることもあった。研究チームは長年にわたり、運動療法による臨床試験を実施し、運動の有用性とともに炎症や繊維化を改善する効果があることを明らかにしてきた。

 今回は、筑波大で実施した生活改善目的の3か月のテスト参加者を対象に6つの基準で選び、「運動群」(有酸素性運動トレーニング群)の54人(平均年齢49.8歳、平均BMI28.2kg/㎡)と、「減量群」(食事ダイエット群)の29人(平均年齢52.4歳、平均BMI29.0kg/㎡)を解析した。

 それぞれのテストの前後に関連する病態関連因子や、肝臓と骨格筋、内臓脂肪組織から生まれる血中生理活性物質の変動を調べ、比較検討した。さらに抗酸化ストレス応答関連の遺伝子発現量も解析した。

 その結果、減量群は運動群と比べ確かな減量効果が認められ、体脂肪量や腹囲も確実に変化した。また運動群では体重減少は小さいものの、骨格筋量維持や筋力の大きな増大効果がみられた。

 運動群は、体重が1%減少するごとに肝脂肪蓄積が12.2%減少し、肝硬度は8.6%減少と大きく改善した。運動群は体重減少とは独立して、肝脂肪蓄積が9.5%減少、肝硬度は6.8%減少と改善がみられた。

 免疫や炎症に関する生理活性たんぱく質(サイトカイン)の分泌量は、運動群が血糖値を増加させるセレノプロテインPの減少と、糖脂質代謝を制御するマイオスタチンの減少などがみられた。

 酸化ストレスマーカー、アポトーシス(細胞死)マーカー、繊維化マーカーは、両方の群でも同等の減少が見られた。その原因は、運動によって転写因子が活性化され、生体の抗炎症、酸化ストレス応答が誘導されたと推測された。

 また運動群で、肥満解消につながるとされる中高強度の身体活動(安静時の3倍以上の運動強度)の増加が大きい高値群(平均45.6分/日増加)と低値群(平均10.8分/日増加)を比較したところ、体重減少に差はなかったが高値群では肝脂肪蓄積と肝機能障害の改善や非アルコール性脂肪肝の改善がみられた。

 以上の結果から、運動することで特有の分子メカニズムにより、大きな体重減少がなくとも十分な脂肪肝の改善効果をもたらす。活動量を中高強度に増やすと、より大きな効果が得られるとみている。