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水温上昇と水質悪化で湖沼の溶存酸素が減少―世界の長期観測データで判明、温暖化促進や生物環境にダメージ:国立環境研究所

(2021年6月3日発表)

 (国)国立環境研究所と米国レンセラー工科大学などの国際研究チームは6月3日、地球温暖化の影響で世界の温帯域の湖沼の酸素濃度が目立って減少していると発表した。魚類などの生息に深刻な影響を与え、温室効果ガスの一つメタンガスの放出にもつながるため、流域の農村地帯から栄養塩の放出を減らす水質改善策が必要と警鐘を鳴らしている。

 調査は北アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランドと日本の霞ヶ浦(茨城県)の計393の湖沼の37年間の観測データの中から、水中の酸素濃度が大きく変化する夏季のデータに着目した。

 水温は表層(水面下1m)で0.39℃上昇したものの、低層(湖底上1m)に明確な変化はみられなかった。しかし酸素濃度は上層、低層の両方で減少していた。

 1980年以降、湖の表層の酸素濃度は5.5%減少し、低層では18.6%も減少していた。これまで太平洋などの海洋で観測された1960年以降のデータ(全層で約2%減少)を大きく上回った。

 表層の酸素濃度の低下は温暖化による水温の上昇が影響しているとみる。夏の平均水温が24℃を超えると、富栄養化で透明度が悪化した湖沼(87か所)では、逆に表層の酸素濃度は増加していた。これは植物プランクトンの働きが活発になり、光合成を増やしたものと考えられる。

 一方、低層の酸素濃度は一貫して減少していた。夏場は表層付近の水温が高くなるため水の密度が低下し、表層と低層の間に密度差が生じて、鉛直方向の水の混合が起こりにくくなるためだ。

 水質が悪化して透明度が低くなると、沈んだ有機物の分解に大量の酸素が使われることから低層の酸素濃度が減少すると考えられている。

 酸素濃度の低下は魚類などの生態系に大きく影響を与える。また植物プランクトンや海藻の栄養となる水中のケイ酸塩やリン酸塩などの栄養塩を増やすことになる。さらに強力な温室効果ガスであるメタンガスの放出によって、温室効果の促進に追い打ちをかけることになる。

 このため流域からの栄養塩の流出を減らすなど湖沼の水質改善対策が、気候変動の適応策として重要だとしている。