睡眠時のエネルギー代謝異常―就寝前の照明で改善も:筑波大学ほか
(2021年6月30日発表)
筑波大学と山形大学は6月30日、睡眠時の体温やエネルギー代謝は眠る前に浴びる照明の種類によって影響を受けると発表した。近年急速に普及したLEDと次世代照明としても期待される有機ELを用いた実験で突き止めた。睡眠時の代謝異常は糖尿病や肥満の発症にも関係すると指摘されているが、就寝前の照明環境がそれらの正常化にとって重要な要素になる可能性があるとしている。
筑波大の徳山薫平教授と山形大の城戸淳二教授の研究グループが、25~26歳の健康な男性10人を対象に就寝前に浴びる照明が体に与える影響を調べた。
実験では、就寝前の午後8時から4時間にわたって被験者にLED光と有機EL光の照明を浴びてもらった。光の強さは細かい作業も可能な1,000ルクスの明るさを用いたが、比較のために明るさをその100分の1に抑えた薄明かり照明を用いた場合についても、それぞれ体に与える影響がどう異なるかを調べた。
その結果、就寝前に有機EL光を浴びた場合には、LED光の場合に比べて睡眠中のエネルギー消費量と体の深部体温が低下し、体内の脂質酸化量が増えていることが分かった。また、被験者の尿の分析から、睡眠前の光照射が体内時計に働きかけるホルモン「メラトニン」の分泌に影響を与え、睡眠時の体温とエネルギー代謝の調節に関与していることも明らかにした。
実験結果について、研究グループは「睡眠前の光照射が、睡眠時の体温とエネルギー代謝に影響していることを示している」として、睡眠時の正常な代謝を促すには照明の制御が重要な要素になると話している。