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空中のドローンに5G電波を送り、ワイヤレス給電実験に成功―大電力化や長距離送電の実現によって、電池の積載なしに荷物や人を運べる:筑波大学

(2021年7月7日発表)

 筑波大学システム情報系の嶋村耕平助教らは7月7日、ホバリング(空中停止)中の小型無人機ドローンに指向性の高い5G(28GHz)マイクロ波を送・受電する実験に世界で初めて成功したと発表した。将来、ドローン重量の大半を占めるバッテリーや燃料の搭載をなくし、電磁波によるワイヤレス給電を実現することで、電池切れなどを心配せずに長時間、荷物や人を運ぶ実用化を目指している。

 小型無人機のドローン利用が身近なところで急速に広がってきた。建築物の撮影やメンテナンス、農薬の空中散布、災害管理などにも使われている。企業は宅配などの実用化にも取り組んでおり、さらに飛行距離の大幅延長と大量輸送への期待が高まっている。

 多くはバッテリー積載型が主流で、蓄電能力の範囲で飛び続けることができる。さらに必要な電力を地上からワイヤレスで持続的に給電・追尾できれば、長時間、より多くの人や荷物を輸送できるようになる。

 ワイヤレス給電には電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式、マイクロ波方式などさまざまなタイプがある。磁界共鳴方式はバスや自動車向けに大電力を給電できるものの、導電距離が1m未満と短い。マイクロ波方式は比較的長距離送電ができるが、効率が悪いなど一長一短がある。

 筑波大チームは、ドローンに高いエネルギー密度の電波を送るため指向性の高いマイクロ波(ミリ波)に注目した。そのために次のような技術開発に挑んだ。

 マイクロ波を遮断するシールドルーム内でも飛行ができるドローン制御技術の開発。マイクロ波送電器から的確に送電ビームを送り続ける追尾技術の実現。5Gの周波数で受信したマイクロ波を直流に変換できるアンテナ整流器の開発などだ。

 これらの実験の結果、高度80cmでホバリングするドローンに対して30秒間、ほぼ途切れることなくマイクロ波の送受電が成功した。これまで使われてきた周波数の10倍以上という極めて高い周波数で、ワイヤレス給電が十分可能であることを実証した。

 まだ送電電力のパワーが足りないため長距離駆動には物足りない。今後はドローンの位置と送電ビームをリアルタイムで制御できる精度の向上や、送・受電用アンテナ間の効率の改善をはかり、ワイヤレス給電効率の向上と送電の長距離化、大電力化を目指すことにしている。