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東南アジアの泥炭・森林火災―日本の年間CO2排出量を2カ月で:国立環境研究所ほか

(2021年7月15日発表)

 (国)国立環境研究所と気象庁気象研究所は7月15日、東南アジアで2015年に発生した大規模な泥炭・森林火災で放出された二酸化炭素(CO2)がわずか2カ月間で日本の年間放出量に匹敵する量だったと発表した。大気中のCO2は地球温暖化の最大の要因とされており、今後も継続的なモニタリング調査を続ける。

 2015年は南米ペルー沖の海水温が上昇する非常に強いエルニーニョ現象が発生、世界中が異常気象に見舞われた。その影響で東南アジアでは深刻な干ばつが起き、島嶼(とうしょ)地域特有の泥炭土壌と森林に大規模火災が発生した。このとき温暖化の原因となるCO2が大量に放出されたため、研究チームはその量の推計を試みた。

 研究では、この時期に現地周辺を通過した旅客機や貨物船の協力を得て、これらに搭載されている観測装置が記録したCO2測定値を解析。同地域で起きた泥炭・森林火災によって大気中に放出された正確なCO2量の推定を試みた。

 その結果、2015年9~10月の2カ月間に東南アジア島嶼地域で大気中に放出されたCO2量は炭素換算3億2,200万t(322Tg、テラグラム)。このうち大規模な泥炭・森林火災によって放出されたCO2量は2億7,300万t(273 Tg)にのぼることが分かった。この量は日本の年間のCO2放出量に匹敵するという。 

 泥炭は数千年の長い年月を通じて蓄積されたもので、ひとたび失われると容易に回復できない。このため研究チームは「大規模火災を未然に防ぐこと、火災後の森林管理を適切に行うことが温暖化を防ぎ、持続可能な社会を実現するためにも重要」として、今後も観測を続け、CO2放出量をモニタリングしていく。