抜け殻でセミの遺伝情報―羽化後1週間以内なら解析も:筑波大学ほか
(2021年7月26日発表)
筑波大学など3大学の研究グループは7月26日、抜け殻を使ってセミの遺伝情報を解析することに成功したと発表した。羽化後1週間程度以内の抜け殻であれば、DNAを抽出して遺伝子型の決定などができる。セミ以外の昆虫にも応用可能で、生体の採取が難しい昆虫や絶滅危惧種の遺伝情報解析に役立つという。
筑波大の津田吉晃准教授らほか、福島大学、北海道大学の研究グループが対象にしたのは、日本のほか中国や極東ロシアの冷温帯林に生息する体長2~3cmほどのエゾハルゼミ。長野県の菅平高原や北海道、九州の全国4地点でその抜け殻を採取した。
実験ではこれらの抜け殻を細かく砕いてDNAを抽出、独自に開発した技術を用いて羽化した後にどれだけ時間が経ったかという「抜け殻の鮮度」が遺伝データ取得にどう影響するかを調べた。その結果、比較的長いDNA断片の遺伝情報を解析する際に用いるPCR検査キットを用いた場合に、成虫から抽出したDNAと同等の遺伝情報が得られることが分かった。さらに、羽化後1週間以内の抜け殻であれば、比較的高い確率で遺伝子型の解析ができることが明らかになった。
研究グループは、今回の手法を用いて日本におけるエゾハルゼミの歴史や集団遺伝構造、生育環境である冷温帯林分布変化との関係などについて評価を進めており、今後は昆虫の視点から気候変動の影響評価にもつながると期待している。