スポーツ中の「低体温症」の発生要因を解明―運動していると体温の低下を感じにくくなる:筑波大学ほか
(2021年7月30日発表)
筑波大学と新潟医療福祉大学の共同研究チームは7月30日、運動をしていると体温が低下しても“寒い”という感覚を感じにくくなることが分かったと発表した。若者を対象にした計測で判明したもので、冬季のスポーツなどで体温の低下に気付かず「低体温症」に陥ってしまう可能性があることが分かった、と警鐘を鳴らしている。
人は寒い環境に曝されると上着を着たりする行動と血管の収縮などの体温調節反応により体の深部体温を一定に保っている。
しかし、温度を感じる温度感覚の変化に運動がどのような影響を及ぼしているのか、についてはまだ分かっていない。
今回、筑波大体育系の西保岳(にしやす たけし)教授と、新潟医療福祉大 健康スポーツ学科の藤本知臣(ふじもと ともみ)講師は運動中に低体温症が起きるメカニズムの解明に向けて体温の低下と運動との関係について検討を行った。
低体温症は熱中症の反対のイメージの疾病。何らかの原因で体が冷えたために体温が低下し体の機能が保たれなくなる症候群のことで最悪の場合は死にいたる。
そこで、研究は22歳から26歳までの男性11人に被験者になってもらい皮膚の温度感覚を「皮膚温冷覚閾値(しきいち)測定装置」と呼ばれる計測器を使って測定。普通に座っている安静時と、18℃の冷たい水の中に下腹部までが浸かった状態で軽い運動をしてもらって深部体温が低下し始める前、深部体温が0.5℃、1℃それぞれ低下した時点、の4時点の温度感覚を調べて低強度の運動が温度感覚に及ぼす影響を検討した。
その結果、運動をしていると体温が低下しても寒いという感覚を感じにくくなることが分かった。
この深部体温低下状態で見つけた温度感覚の鈍化を研究チームは「低水温の海や川でのレクリエーション活動や雪山の登山など比較的低強度の活動中に生じる低体温症の発症を助長しているメカニズムの一つかもしれない」と見ている。
今後さらに検討を加えることで低体温症の発症予防につながることが期待される。