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エポキシ樹脂の溶融技術を開発―複合材料リサイクルに道:物質・材料研究機構ほか

(2021年7月29日発表)

 (国)物質・材料研究機構と新構造材料技術研究組合は7月29日、接着剤や複合材料などに広く使われている熱硬化性エポキシ樹脂のリサイクル技術を開発したと発表した。生体由来の水溶液に浸すだけで樹脂を溶かすことができる新手法を見出だした。航空機や自動車の軽量化に欠かせない高強度材料である炭素繊維強化プラスチックなどのリサイクルに活用できるという。

 エポキシ樹脂は熱を加えることで硬化する。この性質を利用して炭素繊維と組み合わせれば、鉄よりも強くて軽い複合材料「炭素繊維強化プラスチック」が実現できるため、近年急速に利用が広がっている。

 新技術では、高分子であるエポキシ樹脂の分子構造の中に、あらかじめ硫黄原子が二つつながった構造「ジスルフィド基」を導入しておく。こうするとアミノ酸が3つつながった天然由来のペプチドで、解毒作用のあるサプリメントとしても服用されているグルタチオンの水溶液に浸すだけでエポキシ樹脂が分解できることを見出した。この分解物は加熱加工することで再びエポキシ樹脂として利用できるため、炭素繊維強化プラスチックなどのリサイクルにも道を開くという。

 炭素繊維はこれまで樹脂との分離が難しく、リサイクルは困難だった。焼却処理をするにも燃えにくく膨大な燃料費がかかるため、埋め立て処理しかないことが大きな問題となっていた。

 新技術について、研究者は「エポキシ樹脂に限らず、さまざまな樹脂・複合材料に適用できる」として、今後さまざまな実用材料に応用して樹脂に関する循環型経済システムの実現に役立てていく。