牛の発情期を簡単、正確に見つける小型装置の開発―国産牛肉価格の適正化への道:農業・食品産業技術総合研究機構
(2016年10月3日発表発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構と(株)イーアールアイは10月3日、牛の人工授精時期の推定に欠かせない発情行動を簡単、正確に発見できる小型装置を開発したと発表した。市販され、普及すれば国産牛肉の値段が安くできるようになるという。
昨今の国産牛の生産にはほとんど人工授精が使われている。このため発情の開始から終了まで約14時間から21時間の種付け時期(発情期)をタイミングよく見つけ、受精することが低コスト畜産の基本になっていた。
しかし近年は受胎率の低下が進んでいた。生産者の高齢化や経営の大規模化によるもので、発情のきめ細かな監視が難しくなっていた。
発情の明確な行動は、雌牛の背後から雄牛や他の雌牛が乗りかかるマウンティング(乗駕(じょうが)行動)でわかる。しかしこのタイミングを見逃すと、次のタイミングまで21日間待たなければならず、経営的にも1頭あたり数万円もの大きな損失になっていた。
開発したセンサーユニットは雌牛の背中の中心部付近の毛に接着剤で固定する。この中に装填された赤外線センサーと加速度計・角速度計によって、牛の歩行や起立、動作や横たわりなどの行動が判別できる。
従来の目視による観察法と比べると、マウンティングの検知・判別の適合率は99.6%で極めて正確につかめた。また起立状態を頻繁に繰り返す落ち着きのなさや、長時間横になる行動を検出することで、健康状態や牛の分娩開始の把握にも使える。
センサーからのデータは、500m以内で一度に10頭までタブレット端末で把握できる。