重金属含む鉱山廃水をもみがら・米ぬかと微生物で浄化―処理環境に合う硫酸還元菌を見出し実現:産業技術総合研究所
(2021年9月9日発表)
(国)産業技術総合研究所は9月9日、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で、硫酸還元菌を用いて鉱山廃水中の重金属を除去する装置の維持管理を容易にする技術を開発したと発表した。もみがら・米ぬかと特定の硫酸還元菌を組み合わせて用いたのが特徴で、鉱山廃水を安定的、継続的に処理でき、低コスト化と環境負荷の低減が期待できるという。
稼働を休・停止した鉱山跡地では重金属を含む酸性の廃水が発生している場所があり、このようなところでは一般に化学薬品で中和処理しているが、この中和処理では中和剤などの化学薬品や専用の設備が必要で、コスト負担や環境負荷が課題になっている。
JOGMECは低コスト・低環境負荷の処理を目指して、硫酸還元菌と呼ばれる微生物の活用に着目、農業廃棄物のもみがらと米ぬかを微生物の担体(住処)と栄養源とし、微生物の働きによって重金属を沈殿除去する装置の開発を進めてきた。しかし、微生物の働き方や活性維持などについて未解明な点を抱えていた。
産総研はJOGMECと協力してこの問題の解決に取り組み、今回、この装置に不可欠な硫酸還元菌を特定するとともに、装置の最適な運転条件を明らかにすることに成功した。
硫酸還元菌は硫酸を硫化物イオンに変換する微生物で、複数種知られる。酸素のある好気条件では著しく活性が下がったり死んだりするため、この菌の活性を高く維持するには嫌気度を高く維持することが必要とされている。
研究の結果、ある特定の硫酸還元菌は嫌気度の低い環境に対して例外的に強く、この菌の活性を維持することが安定な廃水処理に重要であることが分かった。
JOGMECでは大規模装置を作製して実証実験を行っているが、新技術は鉱山廃水だけではなく産業廃水の処理への応用も期待できるとしている。