ES細胞・iPS細胞から骨格筋細胞を簡便に作製―温度感受性センダイウイルスを遺伝子運び屋に利用:京都大学iPS細胞研究所/理化学研究所ほか
(2021年9月14日発表)
京都大学iPS細胞研究所と理化学研究所、(株)アイロムグループの共同研究グループは9月14日、様々な細胞に分化できるES細胞、あるいはiPS細胞から骨格筋細胞を簡便に効率的に作製する技術を開発したと発表した。分化開始から14日で高純度の骨格筋細胞を得られるため、骨格筋細胞に障害の出る神経筋疾患の病態解明や創薬の研究促進が期待されるという。
Myod1と名付けられた転写因子をES細胞、あるいはiPS細胞に導入すると、これらの細胞から骨格筋細胞が速やかに分化誘導されることが知られている。
ただ、ES細胞・iPS細胞は転写因子をはじめとした外来の遺伝子を導入しにくいという性質がある。そこで研究グループは導入に優れるセンダイウイルスベクターを外来遺伝子の運び屋として用い、転写因子Myod1を導入した。
その際、温度感受性のあるセンダイウイルスベクターを使用した。温度感受性センダイウイルスベクターは高温環境で培養すると細胞内から除去される特性を持っている。38-40℃の高温環境で5日間培養したところ、分化誘導途中の細胞内にとどまっている温度感受性センダイウイルスベクターが除去されることが確認された。
それとともに、温度感受性センダイウイルスベクターの除去過程で、熱ストレスが中胚葉系への分化および骨格筋細胞の成熟にも促進的に働くことを見出した。
これらの成果からなる新手法は、分化誘導効率が高く、ヒト骨格筋の作製を簡便にするもので、生み出される骨格筋細胞の純度も高いという特長がある。iPS細胞からの分化誘導で得られる神経筋疾患の病態モデル構築への利用が期待されるという。