遺伝距離大きいと雑種できにくい―半倍数体のハダニでも:筑波大学ほか
(2021年9月23日発表)
筑波大学、茨城大学などの研究グループは9月23日、雄が1セットのゲノムしか持たない半倍数体生物でも集団間の遺伝距離が大きくなるほど雑種ができにくい生殖隔離が起きると発表した。生殖隔離はショウジョウバエなどヒトと同様に雌雄とも2セットのゲノムをもつ二倍体生物ではよく知られているが、半倍数体生物でも起きることが分かったことで生物種分化の研究に新たな展開が期待できるという。
筑波大、茨城大のほか流通経済大学、(株)日本バイオデータの研究者も参加した研究グループが対象にしたのは、体調1mm未満の果樹害虫としてよく知られる節足動物のオウトウハダニ。雌は2セットのゲノムを持つが、雄は1セットしか持たない半倍数体生物として知られている。
研究では、ヨーロッパから日本にかけて7カ国・地域から集めたオウトウハダニの集団間で交配実験を進め、遺伝子配列を調べるなどして遺伝距離の大きさが生殖隔離にどのような影響を与えるかを詳しく解析した。その結果、遺伝距離が大きいと受精する前の段階や受精後においても雑種の発育や妊性(子供の出来やすさ)に問題があるなど、交配後のさまざまな段階で生殖隔離が起きていることが分かった。
さらに、この現象が集団間の遺伝距離が遠いほど強く現れるという傾向がみられた。同じ遺伝距離であっても集団間の地理的な分布が近いと、受精前の段階で自然選択によって生殖隔離が強化される傾向も示唆されたという。
研究グループは、今後もハダニ類を対象に研究を進めることで、二倍体に比べて環境変化への適応が速く、社会性を発達させやすいといった半倍数体生物に特有の特徴が種分化に与える影響を解明したいとしている。