新しいアントシアニンを6種類発見―観賞植物のリップスティック・プラントの花で見つける:国立科学博物館
(2021年10月12日発表)
実験で色素成分を分析したリップスティック・プラントの数種
©国立科学博物館
(独)国立科学博物館はインドネシアのボゴール植物園、(公財)サントリー生命科学財団と共同で10月12日、観賞植物として人気のあるリップスティック・プラントの花から、6種類の新しいアントシアニンを発見したと発表した。「アントシアニン」は、様々な花や果実などに含まれている天然色素。今回リップスティック・プラントの花から13種類のアントシアニン色素を取り出して構造を決定することに成功し、その中にこれまで知られていなかった新しい分子構造のアントシアニンが6種類も含まれていていることを見つけた。
リップスティック・プラントは、花が口紅(リップスティック)に似ているというところから名付けられた植物で、中国からマレーシアなどにかけての亜熱帯、熱帯に分布する。日本でも人気があるが、インドネシアではさらなる市場拡大に向け新品種の育成が試みられ、ボゴール植物園と国立科学博物館筑波実験植物園は共同研究契約を結んで新品種開発に向けた共同研究を進めている。
今回の研究は、今までとは違った色の花が咲くリップスティック・プラントの新品種を作るための知見を得る目的で花の発色に関わるアントシアニンに着目、ボゴール植物園がこれまでに育成した品種をはじめとする8つの品種と野生種から花弁とガクを採取してそれらに含まれるアントシアニン成分を取り出し分析を行った。
リップスティック・プラントのアントシアニンについては、英国の研究者らが分子構造の異なる2つの種類が含まれているということをこれまでに報告していた。
今回の共同研究は、NMR(核磁気共鳴)装置でアントシアニンの水素や炭素の繫がり方を明らかにし、液体クロマトグラフ質量分析計でアントシアニンを構成する炭素・水素・酸素の数を決定するなど、最新の構造解析手法を使って、より多くのアントシアニンの構造を明らかにした。
今までに国内外で育成されてきたリップスティック・プラントの花の色は、赤から橙色(だいだいいろ)。アントシアニンの中には、赤から橙色だけではなく、紫や青色を発色するものもある。
研究グループは、「今回取り出したアントシアニンの中には、紫や青系の花でも見られるようなアントシアニンが複数含まれていることから、今後の品種開発によって多彩な花の色を持つ品種が生み出せる可能性がある」と話している。