焼き芋に好適、サツマイモの新品種「あまはづき」を開発―8月から家庭の食卓に:農業・食品産業技術総合研究機構
(2021年10月20日発表)
8月に収穫した「あまはづき」の焼き芋
黄色みが強く、ねっとり甘い焼き芋に仕上がる。
©農研機構・中日本農業研究センター
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は10月20日、味の良い焼き芋ができるサツマイモの新品種を開発したと発表した。“畑のスイーツ”として幅広い世代に人気がある焼き芋の材料であるサツマイモを甘くするためには土の中から掘り出した後一定期間貯蔵しておくことが必要で、ねっとり甘い焼き芋を作れるように出荷できるのは最も早くて9月下旬といわれている。新品種はその壁を破るもので貯蔵することなしに収穫直後の8月から糖度の高いねっとりした焼き芋が作れるという。
近年、ねっとりした甘い焼き芋がブームになっており、「べにはるか」などの品種が人気化しているが、掘ったサツマイモをすぐには焼き芋に使えない。
甘い焼き芋にするには、土の中での生育期間中に内部に蓄積されたデンプン分を甘い糖分に変えてやらないとならず、収穫後一定の期間貯蔵して糖分に変換する必要があるからだ。そのため、産地では低い温度で貯蔵して糖化を早めるなどといった工夫をこらしているが、それでも出荷は9月下旬頃になっている。
その課題を解決しようと開発したのが今回の新品種。名称は「あまはづき」。
「あま」は甘くておいしい、「はづき」は古語で8月を「葉月」と呼ぶところから採ったといい、既存の「からゆたか」を母、「谷05100-172」を父とする交配により作った。
関東地域のサツマイモは、通常5月上旬~6月中旬に植え付けて10月中旬~11月上中旬に収穫する方法で作られている。
それに対し、新品種「あまはづき」は、早掘り栽培というそれより早い4月下旬頃から植え付ける方法で作り、「低温糊化性(ていおんこかせい)デンプン」と呼ばれる特殊なデンプンを含んでいる。糊化とは、糊(ノリ)状になること。低温糊化性デンプンは、通常のサツマイモデンプンより低い温度で糊化する性質があり焼き芋にする際、糖に変わるデンプンの量が多くなって甘みが強くなる。
今回の「あまはづき」は、その特殊なデンプンの効果で貯蔵を行なわなくてもこれまでの代表的な焼き芋用の品種「べにはるか」より2割程度糖度が高くて甘く、焼き芋にすると綺麗な黄色(きいろ)に仕上がり、収量も「べにはるか」並みの栽培結果がでているという。
農研機構は「秋の味覚であるねっとり甘い焼き芋をひと足早く食卓にお届けできます」と自信を見せており、2022年春から種苗企業が関東地方を中心に苗の供給を始める予定になっていると言っている。