細胞死を促進する鍵になる新たな証拠を発見
:筑波大学

 筑波大学は3月31日、アポトーシス(細胞死)を促進する鍵として働く2つ目の普遍性の証拠を発見したと発表した。
 生命活動の中心的な役割を果たしているのはタンパク質で、DNA(デオキシリボ核酸)上に暗号の形で保存された遺伝情報に従いアミノ酸を原料として合成される。タンパク質の原料であるアミノ酸は、タンパク質に組み込まれた後に化学修飾(リン酸化、メチル化など)を受けることで機能の多様化が生み出され、分子認識に重要な刻印として働いている。
 タンパク質の刻印(化学修飾)は、細胞の生死にも重要な働きをしている。細胞の生死は、「生存シグナル伝達」と「細胞死シグナル伝達」のバランスにより巧妙に制御されている。このシグナル伝達経路のバランスが崩れると、がんや神経疾患などの病気を引き起こす。しかしながら、タンパク質の機能をコントロールする刻印の暗号解読の研究は、ほとんど進展していない。
 筑波大の研究チームは、これまでにアミノ酸の一つであるアルギニンがメチル化された「アルギニンメチル化」という刻印が、細胞の生存シグナル伝達をOFF(アポートシスの促進)にする新しい暗号であることを発見し、世界に先駆けて発表した。しかし、この暗号が、普遍的なものかどうかは不明のままになっていた。
 今回の研究では、試験管内及び培養細胞株を用いた実験で、アルギニンメチル化酵素「PRMT1」が、アポと―シスを促進する因子である「BAD」のアルギニンをメチル化していることを発見した。また、BADと呼ばれるアポトーシスを促進するタンパク質に導入されていた 暗号を活性化することで、細胞死を促進することにも成功した。
 さらに、このメチル化が、「生存シグナル」であるリン酸化という刻印をBADへ導入するのを妨害していることも解明した。
 この研究で、アルギニンメチル化暗号が、「生存シグナル」を遮断し、アポトーシスを促進する鍵として働く2つ目の証拠であり、このメカニズムが普遍的であることを証明できた。今後は、生体内での役割を明らかにすることで、アルギニンメチル化を起点とした細胞死の解明や、新しい創薬基盤の開発が期待される。
 この研究成果は、3月28日付けの米国科学アカデミー紀要誌(Early Edition)に掲載された。

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