(独)産業技術総合研究所は3月31日、東京理科大学、パンチャコット・マハビダラヤ大学(インド)の研究者と共同でグリーンプロセス用の再生可能な新しい触媒を見つけたと発表した。
この触媒機能は、同研究所が2008年に開発した「ニッケル錯体タイプ有機ナノチューブ(略称:Ni-ONT)」と呼ぶ超微細なチューブ状新物質の用途開発の一環で見つけたもの。
これまでの触媒の多くが白金などの高価な貴金属でできていたのに対し、Ni-OUTは一切貴金属を含まず、有機化合物を化学合成するさいの酸化反応を室温で進めることができる。
Ni-OUTは、ナノチューブの表面にニッケルイオンを固定した構造をしており、その全てのニッケルイオンがナノチューブの内外表面に露出し触媒として働くという。
環境への負荷が少ない有機反応のことを「グリーンプロセス」と呼び、内外で研究が進められているが、それには反応を温和な条件で高効率に進行させることのできる触媒が不可欠となる。
Ni-OUTは、各種有機化合物の酸化反応を有機溶媒を使わず水中で加熱せずに室温で行え、さらに固体なので触媒反応後ろ過によって回収し、再利用できる。5回再利用しても触媒活性が低下しないことをスチレンの酸化反応などで確認しているという。
Ni-OUTは、大量製造が可能なことから、同研究所ではグリーンプロセス用として同触媒のさらなる高効率化、高耐久性化を図ると共に「サンプル提供による共同研究などを通じて、低環境負荷の酸化反応プロセス実現に向けての実証実験を進める予定」といっている。
この研究成果の詳細は、英国王立化学会の学術誌「グリーン・ケミストリー」のオンライン版で4月1日公開された。
No.2011-13
2011年3月28日~2011年4月3日