(独)国立環境研究所は3月30日、南米大陸の水資源影響評価の不確実性を低減できる信頼性評価法を開発したと発表した。気候変動に伴い南米大陸の多くの場所で湿潤化が予測されているが、アマゾン川流域では乾燥化する可能性が示唆されたという。
気候変動の予測は、大気海洋結合モデル(GCM)と呼ばれる全球の大気・海洋コンピューターシミュレーションを用いて行われるが、気温変化の予測に比べて南米大陸の降水量変化の予測は各国・各機関のGCM間で大きなばらつきがあり、GCMの予測結果を入力データとして用いる水資源影響評価に不確実性が生じている。
たとえば、年平均流出量(降水の内、蒸発せずに、河川や湖沼に流れ込んだり地下水を涵養したりする水の量)の予測では、シミュレーション結果の平均(アンサンブル平均)をとると南米大陸の多くの場所で湿潤化が予測されるが、アマゾン川流域の予測に関しては特に不確実性が大きく、GCMによっては湿潤化、あるいは逆の乾燥化という結果が出る。どのような入力データの差が将来の予測に大きなばらつきを生むのかは明らかでなく、不確実性を制約する方法論は確立されていない。
国立環境研の研究チームは、気象学、海洋学の分野で用いられている特異値分解解析と呼ばれる高度な統計解析手法を適用することで水資源影響評価の不確実性の低減を図った。具体的には、年平均流出量変化の不確実性と気候変動予測の不確実性との間の関係を調べ、ウォーカー循環、ハドレー循環と呼ばれる大気循環と降水量、年平均流出量の変化との関係を明らかにした。
また、年平均流出量変化の不確実性が、GCMの現在の気候実験におけるどのような性質と関係しているかを調べ、その関係性を突き止めた。さらに、ある気候パターンに関係する現在の気候実験の誤差をゼロとした場合の年平均流出量変化予測を求めた。その結果、アンサンブル平均では、アマゾン川流域が湿潤化するという予測であったのに対して、観測との比較で不確実性を制約した場合、アマゾン川流域は乾燥化する可能性が高いことが分かったという。
複数のGCM間で将来の気候変化予測に大きなばらつきがある時、多数のGCMが予測する結果の方が信頼できるとは限らないことが示されたとしている。
No.2011-13
2011年3月28日~2011年4月3日