高エネルギー加速器研究機構、東京工業大学、トヨタ自動車(株)は8月1日、固体中をリチウムイオンが液体のように動き回る超イオン伝導体のリチウム硫化物(Li10GeP2S12)を発見、その結晶構造も解明したと発表した。新材料のリチウムイオン伝導率は、室温(27℃)で従来のリチウムイオン伝導体(Li3N)の2倍、既存のリチウムイオン二次電池に使っている有機電解液の値も凌ぐ世界最高(12mScm-1)を示し、全固体化を目指す電気自動車用次世代電池の電解質材料として期待される。
電気自動車の次世代用電池開発の鍵は、電池に用いる電解質が握っているといわれる。電気自動車でガソリン車並みの走行距離を実現するには、容量が今の5~7倍の自動車用電池が必要とされるが、電池をこれほど高容量・高出力・長寿命にするには、電池の全てをセラミックスにする全固体化が望ましい。しかし、現在の固体電解質のイオン伝導率は、有機電解液に比べ一桁以上低く、イオン伝導度の高い固体電解質材料が求められてきた。
今回の開発で研究グループは、リチウム硫化物系の物質探しを行い、有機電解液の値を超すイオン伝導率を持つ新しい超イオン伝導体を発見、全固体電池用電解質として動作することを確かめた。
さらに、高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構が茨城県の東海村に建設した大強度陽子加速器施設を使っての中性子回折測定で、新材料がこれまでにない三次元骨格構造を持ち、その中にリチウムが鎖状に連続して存在し、高い伝導性を実現していることを見つけた。
研究グループは、この新材料によってリチウムイオン電池の全固体化ができるようになり、電気自動車用次世代電池実現に貢献できるとして、更に伝導性や安定性を向上させ、2013年までに新材料を使った実用的な電池を試作、性能を確かめる計画。
この成果は、英国の科学誌「ネイチャー・マテリアル」7月31日(現地時間)号に掲載された。
No.2011-30
2011年7月25日~2011年7月31日