汚染水中のヨウ素とストロンチウムの除去材を開発
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は7月27日、メソポーラスシリカと呼ばれる多孔質材料を用いて水溶液中にある極微量のヨウ素とストロンチウムを選択的に吸着・除去できる除去材を開発したと発表した。
 ヨウ素やストロンチウムは、これまで化学的に特に問題にされることはなかったが、最近の福島第一原子力発電所の事故で、原子力発電所から放射性物質として放出され、その除去方法が関心を集めている。
 新しく開発した除去材は、シリカ(酸化ケイ素)の多孔質体で、表面には整然と並んだ直径数十nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の微細な孔が無数にあいていて、そのナノサイズの孔の内壁に、ヨウ素イオンやストロンチウムイオンを選択的に捕獲する吸着性化合物がびっしり敷かれている。
 この除去材を汚染水に混ぜることで、ヨウ素やストロンチウムを選択的に捕獲することに成功した。除去材の孔の内側に高密度に並んだ吸着性化合物は、ヨウ素イオンで0.009ppm(1ppmは100万分の1)、ストロンチウムイオンで0.5ppmまで捕獲できるという。
 従来の吸着材は、塩素やマグネシウムなどの海水の成分との区別がつかず、目的以外の物質を吸着することも多かった。新しい除去材は、選択性の高いことが大きな特徴で、目的の元素と他の物質を厳密に識別して捕獲することができる。
 イオンを捕獲するメカニズムは、化学的作用であるため、原理的には化学的性質が同じヨウ素131やストロンチウム90のような放射性同位元素も同じように吸着、捕獲することができる。
 ヨウ素用除去材1g当たりで、0.02gのヨウ素を吸着除去でき、それが全て放射性のヨウ素131ならば90T(テラ、1Tは1兆)ベクレルの放射能量になる。
 さらに、除去材に捕獲されたヨウ素やストロンチウムは、「逆抽出」という処理を行うことで除去材からの分離が可能で、除去材を繰り返し再利用することもできる。
 また、ヨウ素除去材は、ヨウ素を吸着すると除去材の色が変化する。そのため捕獲が有効に行われていることを目視で確認でき、放射性ヨウ素の検出にも利用できる。
 同研究機構では、今後他の機関と連携して試験を行い、早急に原子力発電所の処理に使用できるようにしたいとしている。

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