(独)物質・材料研究機構は7月25日、家電リサイクルで集められた使用済みテレビのブラウン管から得られるガラス破砕くず(ガラスカレット)が放射線の遮蔽に有効であることを確認したと発表した。ブラウン管ガラスは、ガンマ線を遮る鉛を多く含んでいることによるもので、東京電力福島第一原子力発電所の事故対策などに有効に活用できるとしている。
原発保守管理・放射性物質関連業務の(株)ATOX(アトックス)の協力のもとに実施した試験によると、ガラスカレットを袋詰めなどし、厚み約55cmにすると、放射線を約100分の1まで減らせることが明らかになった。これは、9cmの厚さの鉛板の遮蔽能力に相当するという。ブラウン管ガラス粉砕時に生じるガラス粉(ビリガラス)とガラスカレットを混ぜて密度を上げると、約40cmの厚みで同等の能力が認められた。ビリガラスを重量当たり66%の配合でシリコン樹脂に練りこんだ材料は、28.5cmの厚さで放射線を10分の1に減らす遮蔽能力があり、これは4.4cmの鉛板の遮蔽能力に相当することも明らかになった。こうした結果から、鉛ガラスカレットをそのまま袋に詰め、土嚢のようにして原発の瓦礫を覆うだけでも鉛板を敷き詰めるのに匹敵する遮蔽効果が期待できるとしている。
7月末のアナログ放送終了にともない、大量の使用済みブラウン管ガラスの発生が見込まれている。未踏科学技術協会・エコマテリアルフォーラムは、今年4月にこれを原発事故対策に活用することを提案していた。今回の調査結果でこの提案の有効性が裏付けられたことになる。
同機構では、コンクリートに混ぜてコンクリートの遮蔽効率を高めたり、安価な樹脂に混ぜ込んで利用したりすることも期待でき、原発事故現場の厳しい被爆作業環境の緩和などに有効としている。
No.2011-30
2011年7月25日~2011年7月31日