(独)産業技術総合研究所は7月26日、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分散と凝集を紫外線照射で容易に制御できる分散剤を開発したと発表した。
SWCNTは、溶媒に溶けないので精製の際SWCNTを溶媒に分散させる分散剤が研究開発されている。しかし、これまでは分散を精密に制御することができなかった。新分散剤は、それを可能にすると同時に、精製作業後に容易に取り除けるのが大きな特徴で、SWCNT精製法の改良やカーボンナノチューブ(CNT)を基材とするさまざまな材料への適用も期待できるという。
SWCNTは、炭素原子でできた直径0.7~4nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度の超微細なチューブ状物質。炭素原子が六角形の網目状につながっており、六角形の並び方の違いで半導体的性質を示したり、金属的性質を示したりする。ナノテクの最も有望な素材の一つとして応用研究が活発に進められているが、半導体SWCNTや金属SWCNTの分離に代表される高度精製技術の開発が実用化の課題の一つになっている。
今回開発された分散剤は、紫外光を当てるとまっすぐな形状から折れ曲がった形状に構造変化する化合物。高い分散能力を備えた有機電解質化合物に光反応性基を導入して作り出した。
光を当てる前の新化合物(分散剤)は、SWCNT表面との親和性が非常に強く、SWCNT表面に吸着する。この化合物は、プラスの電気を帯びているので、化合物を表面にまとったSWCNT同士は電気的に反発し合い、その結果としてSWCNTは水中でそれぞれ孤立分散し、非常に安定な分散状態になる。それが、紫外光を当てると、屈曲した分子構造の化合物に変化して親和性が失われ、SWCNTの表面から離脱、化合物が離脱したSWCNTは凝集するという仕組み。化合物とSWCNTは、きれいに分離するので化合物を容易に除去できる。
研究チームは今後、分散状態と凝集状態のスイッチングの高速化や、繰り返し利用できる分散剤の開発、さらに大量合成法の確立などを目指し、SWCNTの応用開発を促進したいとしている。
No.2011-30
2011年7月25日~2011年7月31日