(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月3日、6年余り前の情報収集衛星2号機打ち上げ失敗の原因になった「H-ⅡA」ロケット固体ロケットブースター(SRB-A)の信頼性向上開発の仕上げとして改良型固体ロケットブースター「SRB-A3」の地上燃焼実験を実施、良好な成果を得たことからH-ⅡAロケット固体ブースター信頼性向上のための開発を終了すると同日の宇宙開発委員会に報告した、と発表した。
平成15年11月29日の情報収集衛星2号機打ち上げ失敗は、打ち上げに用いたH-ⅡAロケット6号機の2本のSRB-Aの内1本が分離しなかったからで、その原因はSRBの燃焼ガスでSRBノズル内部の断熱材が焼失、表面が削られて板厚が薄くなるノズルの局所エロージョン(磨耗)だった。そこで、同機構は、当面の対策として、局所エロージョンの発生を極力低減するための設計変更を行い、H-ⅡAロケット7~13号機に用いた。
これと並んで同機構は、局所エロージョンの発生メカニズム解明とノズルを改良したSRB-A3の開発に着手した。基本的設計は「A3」に準じながらノズル断熱材を厚くしたSRBを用いたH-ⅡAロケット14号機の飛行結果などを勘案、15・16号機は「A3」そのものを用いて打ち上げに成功した。それらのロケットでは、平均燃焼圧力が低くて燃焼時間の長いロケットモーターが使われたが、「A3」には別に平均燃焼圧力が高くて燃焼時間の短いタイプが用意されていた。
後者のロケットモーターと信頼性を更に向上する対策を施した「SRB-A3」の実機大モーターの地上燃焼試験は、昨年11月11日に同機構の種子島宇宙センター試験場(鹿児島・種子島)で実施され、主要推進特性は予測と一致、良好な成果を得た。
これにより同機構は、H-ⅡAロケット7号機以降続けてきたSRBの信頼性向上のための開発完了を確認、今度の宇宙開発委報告となった。
改良ノズルを搭載したH-ⅡAロケットは、今年度に予定されている準天頂衛星「みちびき」初号機打ち上げから使われる。
No.2010-5
2010年2月1日~2010年2月7日