米国の加速器用い4兆度の超高温状態を実現
:理化学研究所/高エネルギー加速器研究機構

 (独)理化学研究所と高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究グループは2月16日、米国のブルックへブン国立研究所(BNL)の「相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)」を用いた国際共同研究で、金の原子核同士を光速近くまで加速して衝突させ、太陽中心温度の10万倍も高い約4兆度の超高温状態を実現するのに成功したと発表した。4兆度という温度は、これまで実験室で発生させた最高温度で、ビッグバン(宇宙創成)から数十万分の一秒後の状態の温度という。
 RHICは、世界初で唯一の衝突型重イオン加速器で、2つの独立した超電導加速リングを持ち、質量数の異なる原子核同士の衝突実験ができる。実際、陽子から金の原子核まで、種々の粒子ビームを加速・衝突させる実験を2000年から行なっている。
 その1つが、日本を含めて世界の14カ国71研究機関が参加している「PHENIX実験」で、今回の成果はその実験から得られた。
 4兆度もの超高温は、超高温物質が発する光の色(エネルギー分布)と発生量から測定する。アインシュタインの有名な質量とエネルギーの関係式に従って、光子(エネルギー)の一部は物質(電子・陽電子対)に変わるので、光子自身の代わりに電子・陽電子対を測定し、光子が電子・陽電子対に変わる割合は理論で正確に計算出来ることから、元の光子の発生量を算出する。
 宇宙に存在する元素を構成する「ハドロン」(強い相互作用をする粒子。陽子や中性子など)の素粒子である「クオーク」や「グルーオン」は、通常なら「ハドロン」に”閉じ込め”られているが、2兆度以上の超高温になると”閉じ込め”が破れて、「クオーク」や「グルーオン」が自由に飛び交う状態(クオーク・グルーオン・プラズマ(QGP)状態)になると考えられている。
 今度の実験で、その2兆度を超す4兆度が実現した。BNLでは今後、RHICの機能を高め、ビーム衝突頻度アップを計画している。PHENIX実験でも、新測定器導入で性能向上を図る。こうしたことでQGPがより詳細に研究できるようになれば約137億年前のビッグバン直後の宇宙の状態ばかりか、素粒子の基本相互作用の一つである「強い相互作用」とその理論の解明が進むと期待される。

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