北関東での微小粒子状物質が高濃度に
―東京近郊で発生し、運ばれてガス成分粒子化
:国立環境研究所

 (独)国立環境研究所は10月23日、東京近郊で発生した大気汚染物質が風で運ばれ光化学反応を受け、北関東で微小粒子が都心部以上に高濃度になることがわかったと発表した。
 大気中の微小粒子は、健康に悪影響を及ぼすと考えられ、日本では2009年に粒径2.5μm(マイクロメータトル、1μmは1000分の1mm)以下の微小粒子状物質(PM2.5)対する環境基準が定められた。ところが、基準を超えているところは多く、実態把握が急がれている。PM2.5は、燃料の燃焼などで生成する一次粒子に、様々な起源をもつ粒子が混ざった複雑な混合物で、大気中での反応で生成される二次生成粒子が大きな割合を占めるとされているが、そのうちの特に有機物に関しては、起源や生成メカニズムは解明されていない。
 環境研は、複数の研究機関と共同で2007年夏季に関東で微小粒子を集中観測し、起源の解析や数値シミュレーションを実施した。観測したのは、前橋(群馬)、つくば(茨城)、騎西(埼玉)、狛江(東京)の4地点。
 調査の結果、例えば前橋では[1]観測期間(2.0μm以下の粒子を観測)の平均濃度は25㎍/㎥で、PM2.5の年平均基準15㎍/㎥を上回った[2]観測した微小粒子全体の約4割は炭素系物質で、そのうちの約7割が有機炭素(CO2のような簡単な化合物を除く炭素化合物の総称)であった[3]有機炭素濃度は、日中高く夜低い日内変動を明確に示した[4]化石燃料起源炭素の濃度は、大半の時間で生物起源炭素の濃度を上回り、日中に増える顕著な変動が認められた。
 その他の地点の観測や起源解析などの結果から、微小粒子に含まれる元素状炭素(炭素のみから成る黒い粒子)の大半は自動車排気ガス由来であり、有機炭素の大半は二次生成である。北関東での夏季の微小粒子に二次生成が大きく寄与している―などが明らかになったとし、北関東での粒子状物質の高濃度化は、東京近郊で排出された粒子が輸送されることに加え、ガス状成分が輸送中に光化学反応を受け粒子化したことが考えられると結論付けている。

詳しくはこちら