沖縄本島河口付近のサンゴの減少続く
―白化現象後も赤土流出・汚染が影響
:国立環境研究所/琉球大学

沖縄本島全域で河口付近に生息するサンゴの被度変化(全定点区画調査記録の平均値)(提供:国立環境研究所)

調査対象地域におけるミドリイシ属サンゴの存在量の変化(全定点区画調査記録の平均値)(提供:国立環境研究所)

 (独)国立環境研究所と琉球大学は4月3日、沖縄本島全域の河口周辺の海域に生息するサンゴが、河口から流出した赤土などによる汚染で1995年から2009年までの15年間に年平均1.1%の割合で減少し続けていたと発表した。沖縄のサンゴは98年夏の高い海水温による白化で大きな被害を受けた後、回復しつつあるとされていた。しかし、河口付近ではその回復力が十分に働かないことが初めて確認された。

 

■ミドリイシ属サンゴの回復力低下

 

 研究グループは、気候変動による海水温上昇と赤土などによる水質汚染がサンゴにどのように影響するかを分析するため、沖縄本島全域の河口付近に17~20地点の観測点を設け、1995年から継続的にサンゴの状態を調べてきた。
 調査対象になった海域では、海水温上昇によってサンゴの半分が死滅した大規模な白化現象が起きた98年以降も、サンゴは回復せず徐々に減少を続けていたことが分かった。単位面積当たりのサンゴの生息する面積の割合である「サンゴ被度」をみると、上のグラフのように、調査を始めた95年に25%弱だったものが、白化後の99年には半減、2009年にはさらに減って7.5%程度となった。特に、サンゴ礁を形成する上で中心的な役割を果たし、生態系を維持するのに重要なミドリイシ属のサンゴの回復力が、下のグラフで見るように低下していたという。
 沖縄周辺の海域では、98年に白化が起きて以降、サンゴは徐々に回復しているとみられていた。しかし今回の調査では、河口周辺の海域では赤土などの流出によって、サンゴの抵抗力と回復力が奪われている実態が初めて浮き彫りになった。
 沖縄では、戦後急速な土地開発によって多量の赤土流出が起きて海洋汚染が進んだため、94年に赤土等流出防止条例を定めて汚染防止対策を続けてきた。今回の調査結果について、研究グループは、今後さらにこうした対策を強力に推進する必要があるとしている。

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