次世代のイネ科モデル実験植物の種子を提供
―「ミナトカモジグサ」、新品種の開発に力
:理化学研究所

栽培中のミナトカモジグサ(提供:理化学研究所)

 (独)理化学研究所は4月5日、環境問題や食糧問題など地球規模の課題解決に必要な新品種の開発に役立つイネ科の次世代モデル実験植物「ミナトカモジグサ」の種子を大学や研究機関向けに8日から提供すると発表した。つくば市(茨城)にある理研バイオリソースセンターが開発・提供するもので、すでにゲノム(全遺伝情報)解読も終了、遺伝子組み換えによる新品種開発などに威力を発揮すると期待している。

 

■実験室内での育成が可能

 

 ミナトカモジグサは、コムギと同じイチゴツナギ亜科に属する植物で、草丈は30cm程度とコンパクト。蛍光灯の下でも育ち、3~4カ月で種子を収穫できる。1個体から収穫できる種子は150粒程度あり発芽率も90%以上という。このため、実験用の植物として適しているという。
 2010年には国際協力でミナトカモジグサのゲノム解読を完了、2億7,000万個の塩基対で構成されていることが判明した。さらに、ゲノムにはたんぱく質のアミノ酸配列を決める遺伝子が2万5,532個存在していることも突き止め、他の植物の遺伝子を導入する技術も開発済みだ。
 また、一般に多くの作物は実験室内で一種育て続けることが困難で、目的の遺伝子を導入して新品種を開発するには大掛かりな設備が必要とされていた。これに対しミナトカモジグサは、大規模設備を必要とせず実験室内で育てられるため、食糧問題解決に役立つ主要穀物などの新品種開発の加速に役立つと期待される。
 これまでモデル実験植物としては、アブラナ科の双子葉植物であるシロイヌナズナがよく知られている。しかし、イネやムギなどの主要穀物を含む単子葉植物の研究にはその遺伝子情報がそのまま利用できない場合が多く、同じイネ科の単子葉植物でモデル実験植物を開発することが課題とされていた。
 今回の成果について、理研は「バイオマス生産に役立つスーパー植物の開発のほか、環境や食料などの課題解決につながる」と期待している。

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