触媒と創薬の研究強化で新センターを設置
―「TIA-nano」事業強化の推進本部も設立
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は4月1日、同日付けで「触媒化学融合研究センター」、「創薬分子プロファイリング研究センター」を新設するとともに、理事長直属の本部組織として「つくばイノベーションアリーナ推進本部」を設立したと発表した。

 

■“ドロップ薬”の再開発も

 

 「触媒化学融合研究センター」は、つくば市(茨城)の同研究所つくばセンターに設けられ、「ケイ素化学技術」、「触媒固定化技術」など4つの中核的な課題の研究に取り組む。
 わが国の化学産業は、出荷額約40兆円(製造業中第2位)、従業員数同88万人を擁する一大産業だが、一方でCO2(二酸化炭素)排出量が全産業で第2位のほか、産業廃棄物排出量も第3位にあり、それら排出物の低減を図るには触媒技術の革新的イノベーションが不可欠と見られている。
 しかし、触媒技術は、種々の化学反応についてそれぞれ独自に開発されてきた個別の技術で構成されており、整理体系化されているとはいえない。
 「触媒化学融合研究センター」は、触媒関連技術のより一層の高度化・高性能化・広適用化・融合化を進めるための設置で、砂から省エネルギープロセスでシリコーン(有機ケイ素材料)の原料を製造する技術や、CO2から有用化学品を合成する技術の開発、貴金属を使わない触媒の開発などに取り組む。
 もう一つの「創薬分子プロファイリング研究センター」は、東京・江東区の産総研臨海副都心センターに開設したもので、体内に投与した医薬分子がどのようなメカニズムで薬効を発揮しているかを明らかにする基盤技術の研究や、臨床試験の途中で開発をやめた“ドロップ薬”の再開発などに取り組む。
 臨床試験まで残った医薬品候補化合物のうち、認可を受けるに至る化合物は、わずか1割。ドロップ薬の中には本来の力を発揮できずに終わっているものが少なくなく、その見直しと利用に挑戦する。
 また、「つくばイノベーションアリーナ推進本部」は、産総研、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構と産業界が2009年に世界的なナノテクノロジー研究・教育拠点を目指して設けた「つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)」事業を強化するための設置で、苦境に立たされている日本の半導体関連産業の研究開発を支援していく。

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