抗がん活性を持つナノファイバーメッシュを開発
―貼るだけで同時にがんの温熱療法と化学療法を実現
:物質・材料研究機構

電子顕微鏡で見たナノファイバーメッシュ(上)と、ナノファーバーメッシュを使ったがん細胞の増殖抑制実験結果のグラフ(下)(提供:物質・材料研究機構)

 (独)物質・材料研究機構は6月14日、がん患部に貼ると温熱療法と化学療法が同時に行える上皮性がん向けのナノファイバーメッシュを開発、これを用いて上皮性がん細胞を効率的に自然死させることに成功したと発表した。

 

■実験でがん細胞増殖を大幅に抑制

 

 上皮性悪性腫瘍の一つである扁平上皮がんは、食道がんの90%以上、子宮頚部がんの80%以上、肺がんの30%以上を占めるといわれ、進行度によって手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)が3本柱となっている。
 これらに加えて近年注目が高まっているのが温熱療法。がん細胞が正常な細胞に比べ熱に弱いことを利用してがん細胞を死滅させる。化学療法と併用すると抗がん剤の効果が向上することが知られている。しかし、これまでは温熱、化学療法を同じ場所で同じタイミングで施すことは難しかった。
 今回開発したのは、患部に貼るだけで両治療法を同時に行えるナノファイバー製のメッシュ状不織布。ナノファイバーメッシュは温度応答性高分子を素材とし、その中に、交流磁場をかけると発熱する磁性ナノ粒子と抗がん剤を混入してある。磁性ナノ粒子が発熱するとメッシュが患部を温めると同時に、温度応答性高分子が熱に反応して収縮し、内部の抗がん剤を放出する。
 ヒトメラノーマ細胞株を用いた実験の結果、がん細胞増殖の大幅な抑制が認められたという。研究チームは、内視鏡でがんを切除後、患部にこのメッシュを貼り、外部から磁場をかけてがんを消滅させるような治療への応用が想定されるとしている。

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