「カルシウムⅦ相」の結晶構造を解明
―Spring-8使い粉末X線回折実験、量子科学計算で解析
:産業技術総合研究所/大阪大学/高輝度光科学研究センター

 (独)産業技術総合研究所と大阪大学極限量子科学センター、(公財)高輝度光科学研究センターは6月12日、超電導になる温度が元素の中で最も高いカルシウムの結晶構造を解明したと発表した。

 

■理論予測とは異なる構造モデルに

 

 元素は100種類以上存在し、53の元素が超電導を示すことがこれまでに確認されている。そのほとんどは、超電導になる温度(超電導転移温度)が数K(ケルビン:零Kはマイナス273℃)程度で、カルシウムの29K(マイナス244℃)が最高。
 カルシウムが29Kで超電導になることを最初に報告したのは、大阪大学。2011年に超高圧下で「カルシウムⅦ相」が現れ、29Kで超電導を示す結晶が現れることを見つけた。
 しかし、そのカルシウムⅦ相の結晶構造は、これまで未確定だった。
 今回の研究は、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高強度の放射光を生み出す(独)理化学研究所の大型放射光施設「Spring-8(スプリング8)」を使っての粉末X線回折(粉末にX線を当て内部構造を解明する手法)実験と、量子科学計算の併用により、そのカルシウムⅦ相の結晶構造を解明することに成功したもの。
 実験では、210GPa(ギガパスカル、約210万気圧)以上の超高圧下でカルシウムⅦ相が出現し、その結晶構造が「理論予測された構造モデルとは異なった新しいものであることが分かった」という。
 この研究から得られた結晶構造を元に超電導転移温度の計算を行なうことで超電導と結晶構造の関連性解明に重要な情報が得られるのではないかと関係者は期待しており、産総研は、「他の元素についても新しい相の探索と結晶構造の解明を進めていく予定」といっている。
 この成果の詳細は、米国の科学雑誌「フィジカル・レビュー・レターズ」の6月7日号に掲載された。

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