筑波大学、東京工業大学、ディー・クルー・テクノロジーズ(株)は6月10日、電子回路の誤動作の原因となるトランジスタ(MOSFET)の雑音を広い周波数帯域にわたって簡便に計測する技術を開発したと発表した。信頼性のより高い電子デバイスの開発が期待できるという。
■100kHz~3GHzまでの雑音特性を計測
MOSFETトランジスタに代表される回路素子は微細化の一途をたどってきたが、それに伴い「特性の揺らぎ」とも呼ばれる雑音が発生し、回路中の電流量を変動させて回路の誤動作を引き起こす原因となっている。
この雑音を計る機器は、これまで数百kHz以下の低周波数帯域と1GHz付近以上の高周波数帯域での計測は可能だったが、これらの中間の周波数帯域については対応する計測機器がなかった。
研究チームは今回、雑音を増幅するための専用IC(集積回路)を開発した。雑音の測定は、ウエハー上に作製されたMOSFETの4端子(ゲート、ソース、ドレイン、基板)に探針子(プローブ)を当てて測る。研究チームは先に独自の雑音プローブ技術を開発しており、今回はこれに新開発した専用ICを低雑音アンプとして搭載した。
この新プローブで測定したところ、これまで計測が困難だった中間の周波数帯域の計測に成功、結果として100kHz~3GHzまでの究極的に広帯域の雑音特性の計測を実現した。
これにより、新しい材料・プロセス・構造の導入に伴うデバイスの雑音を高周波まで評価できることから、電子デバイスの迅速な開発や信頼性の向上が図れるとしている。