(独)物質・材料研究機構と(独)科学技術振興機構は9月18日、固体と液体が接する界面で電気化学反応がどのように進むかを世界で初めて測定することに成功したと発表した。固液界面の反応は蓄電池などの材料開発のカギを握るが、従来は真空中での測定が必要で液体には使えなかった。新技術ではナノ(ナノは10億分の1)メートル単位のシリコン薄膜内に液体を閉じ込めて測定できるようした。経験頼りだった蓄電池や燃料電池などの開発や性能評価の高度化に役立つと期待している。
■エックス線光電子分光法を利用
測定に成功したのは、物材機構ナノ材料科学環境拠点の魚崎浩平コーディネーターと科技振興機構の増田卓也さきがけ研究者らのグループ。
測定には、物質にエックス線を照射したときに跳び出てくる電子(光電子)のエネルギーを分析することで物質表面の元素の種類や化学的な状態を評価する「エックス線光電子分光法」を利用した。今回はこの方法で、蓄電池などの半導体材料として広く使われているシリコンと水の界面で起きる電気化学反応を測定した。
従来この方法では、跳びだしてきた電子が気体による散乱などで影響を受けないよう真空中で行う必要があり、気化しやすい液体では測定できなかった。そこで実験では水を容器内に封じ込め、その一部に厚さ15nm(ナノメートル)という極めて薄いシリコン薄膜の窓を付けた。この容器を真空中に置き窓を通してエックス線を照射、シリコン薄膜と水の界面で起きる電気化学反応をシリコン薄膜越しに測定できるようにした。
この結果、跳びだしてくる電子の数と運動エネルギーの変化から、界面でシリコン酸化膜が成長する様子などが観察できた。また、シリコン薄膜にかける電圧などを変えることでシリコン酸化膜の厚さをナノメートル以下の単位で制御することにも成功した。
今回の成果について、研究グループは「新しいエネルギー材料の創出やデバイス開発に有益な情報が得られる」と話している。