高エネルギー加速器研究機構(KEK)は9月17日、(独)産業技術総合研究所の研究者と共同で、レーザー光線を長基線として用い、電子・陽電子線形加速器用の加速装置48台を500mにわたり一直線状に並べることに成功したと発表した。長距離線形加速器の建設のために開発した今回の高精度アライメント(整列配置)技術は、ダム事業、トンネル工事、堤防建設など高精度な長基線を必要とする大規模土木工事への応用が期待できるという。
■ダム、トンネル工事、堤防建設などに応用も
KEKは現在、KEKB加速器と呼ばれる電子・陽電子衝突型加速器の改造に取り組んでおり、その一環として、このリング状の加速器に電子・陽電子を送り込む直線状の線形加速器(入射器)も改造中。入射器のこの高度化改造作業では、最長直線部の500m長にわたり、その直線の基準となる長基線が欠かせない。
加速装置を水平な床の上に直線状に並べていくと、地球の丸みの影響で500m先では約20mm垂れ下がる。従来はテレスコープなどを用いた光学測量に基づき機器のアライメントが行われてきたが、長距離線形加速器のアライメントでは測量の繰り返しにより誤差が蓄積され、精度的に限界があった。
研究グループは今回、長基線にレーザーを利用する技術の開発に取り組み、すべて市販の部品によって組み上げたレーザー装置を用い、従来困難であった500m長の高精度アライメントに成功した。
レーザー入射角度に対し微細な調整が可能なレーザー光学系、レーザーが通過する輸送路全長を真空にする技術、入射角を長時間安定化する自動制御技術を独自開発し、実現した。レーザー長基線を利用した500m長の達成は世界で初めての成果という。