お米が幅広い食感のゲル状食品素材に“変身”
―製造技術を開発、プリン、ムース、パイなどもOK
:食品総合研究所

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様々な食感に変化でき、シューもクリームも同一の食材からできる(提供:食品総合研究所)

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の食品総合研究所は10月22日、デンプンのアミロース分の比率の高い米(アミロース米)を製粉せずに糊化し、寒天や豆腐のようなゼリー状から弾性あるゴム状のものまで、幅広い食感(物性)のあるゲル状の食品素材を製造する技術を開発したと発表した。この技術を用いれば、これまで炊飯米には不向きとされてきた高アミロース米からプリン、ムース、クリーム、パイ等の食品が製造でき、シュークリームのシューとクリームの原料を小麦粉から米に置きかえることも可能という。

 

■高アミロース米の用途拡大

 

 農研機構の食品総研は、わが国での主食としてのご飯(炊飯米)の消費が減り、輸入穀物を原料とするパンや麺などの消費が増えたことに対して、平成24年(2012年)度から国産米をパンや麺などに活かす技術開発に努めてきた。今回発表の技術はその成果で、高アミロース米を製粉せずに粒のまま、水を加えて炊飯・糊化し、温度制御と高速攪拌などの操作で様々な食感のゲル状の食品素材を製造する。このため、卵や油脂等の使用量を減らした洋菓子などの低カロリー食品の開発も可能となった。
 今回の成果の特色は、高アミロース米の直接糊化によるコスト低減にあり、一定量まとめて一度に生産する「バッチ方式」なら、中小業者でも可能とされる。高アミロース米は粘りが少ないので炊飯米には不向きとされ、カレーやピラフや米粉麺などにつかわれてきたが、今回発表の新技術で新しい用途拡大も期待される。モチモチ感のある米麺や米を原料とする洋菓子、小麦や卵、ゼラチンを加えない菓子製造への活用などがそれ。これにより米の新しい需要が生まれ、農業の6次産業化推進への貢献が期待される。
 食品総研としては今後、ゲル化現象の機構解明の研究を進めるとともに、民間企業と連携し、大量生産技術、物性制御技術の高度化、民間企業での商品開発などを進めることにしている。

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