2400 ℃での計測の様子(レーザーマイクロゲージの受光部)(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所は11月25日、工業用カーボン材料の熱膨張を2400℃の超高温領域まで正確に測れる装置を開発したと発表した。超高温を必要とする製鋼や精錬、半導体製造などの技術の高度化が期待できるという。
■接触法と非接触法で互いに補完
高温製造プロセスで用いられる材料には耐熱衝撃性が求められる。それを評価する指標の一つである熱膨張係数の試験では、線熱膨張率を測るための参照物質として従来、高純度アルミナ焼結体が用いられてきたが、2000℃までしか使えなかった。
また、レーザーを用いる非接触法の熱膨張率測定では、超高温になると炉からの強烈な放射光により受光部に散乱光が入り込むため、1800℃程度が限界であった。
研究チームは今回、高純度アルミナ焼結体の代わりに、より耐熱性の大きい高密度等方性グラファイトを参照物質に用いて接触法の測定温度を3000℃近くまで高める一方、炉からの散乱光が受光部に入りにくいようにしてレーザーマイクロゲージを利用した非接触法の問題点も改善、接触、非接触の二方法で計測し、互いに補完させることで2400℃までの高温領域における熱膨張を正確に測れるようにした。
代表的な工業用カーボン材料である人造グラファイトを作る工程に黒鉛化という超高温熱処理があり、その際に熱収縮現象が起こる。開発した装置を用いて2400℃の高温領域まで試験片の寸法変化を計測したところ、この熱収縮現象を「その場観察」できたという。熱収縮による歩留まり低下を改善するための基礎データ取得をはじめ、超高温を必要とする各種技術の進展に役立つとしている。