鉛使わない高性能圧電セラミックスを開発
―従来品に匹敵する性能で安全性・環境汚染防止に貢献
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は1月22日、高速道路などの劣化監視用センサーやカメラの手振れ防止素子などに使われている高性能圧電セラミックスを有害な鉛を使わずに作ることに成功したと発表した。圧力と電気を相互に変換する圧電性能は従来の鉛系に匹敵、センサーとしての実用性も確認した。安全性や環境汚染防止の観点から世界的に鉛の使用は禁止される方向にあるとして、実用化に向けた研究を急ぐ。

 

■センサーとしての実用性を確認

 

 開発したのは、産総研電子光技術研究部門の相浦義弘研究グループ長、王瑞平主任研究員ら。2001年から鉛系圧電セラミックスとよく似た特徴を持つニオブ酸ナトリウム・カリウムを対象に研究に取り組んできた。
 研究チームは今回、この物質が圧電効果を発揮するのに必要な結晶構造である正方晶と菱面体の境界付近の組成を連続的に制御できることに注目、圧電特性を最適化することに成功した。その結果、圧電材料として使える最高温度を240℃と高くでき、同時に圧電材料の変形能力の指標である圧電定数も鉛系に匹敵する性能が実現できることを突き止めた。圧電セラミックスの特性評価項目はこれ以外にも20以上存在するが、いずれも鉛系に匹敵するものだった。
 そこで、この材料で高速道路や橋などの構造材に変形や亀裂が生じるときに放出される音波による振動を感知して電気信号に変えるセンサーを試作したところ、従来の鉛系センサーと同程度の感度を示した。また、超音波で水中での対象物までの距離を測定するセンサーの試作でも、測定精度5mm以下と鉛系と同等の性能が実現できた。
 圧電セラミックスはさまざまな電子機器に広く使われているが、欧州共同体(EU)ではすでに鉛の使用が原則禁止になっており、鉛を含まない高性能圧電セラミックスの開発が求められていた。
 研究チームは今後、さらなる性能の改善や電気を機械的な動きに変えるアクチュエーターの試作に取り組むほか、電子機器への組み込みを実用化するための共同研究先を探したいとしている。

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