宇宙線ミュオンを使い原子炉内の核燃料を特定
―立ち入り困難な福島原発の調査などに有効
:高エネルギー加速器研究機構/筑波大学/東京大学/首都大学東京

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上は、原子炉建屋とミュオン計測装置配置図。下は、3つの地点での観測結果を再構成した核燃料と想定される重い物質(濃い緑色)、使用済み燃料プール(水色)、格納容器(ねずみ色)。18度ごとの異なった視点で再構成した(提供:高エネルギー加速器研究機構)

 高エネルギー加速器研究機構、筑波大学、東京大学、首都大学東京の研究グループは1月23日、原子炉建屋内の核燃料の存在を建屋外から特定し、概略の形状を画像化することに成功したと発表した。立ち入りが困難な福島第一原子力発電所の内部調査に使えそうだという。

 

■世界初の可視化

 

 核燃料の検出に利用したのは宇宙線ミュオン。ミュオンは地球の外部から大量に降り注いでいる粒子の一種で、高い物質透過能力があることからX線で人体内部を調べるように、分厚いコンクリートや鋼板でできた大型構造物などの内部を透視するのに使えるのではないかと期待されていた。
 合同チームは今回、日本原子力発電(株)の協力を得て、ミュオンを捕えるミュオン計測器を東海第二発電所の原子炉建屋外部に設置し、核燃料の検出を試みた。実験では原子炉を3方向から観測、その観測データをもとに内部構造を3次元的に再構成した。
 ミュオンは物質を透過する際、物質により吸収されたり散乱されたりする量にわずかな違いが出る。核燃料は特に原子炉の構造物体に比べ吸収、散乱によるミュオンの減衰が大きいという特徴がある。
 観測データの再構成の結果、核燃料と考えられる重い物質、使用済み核燃料プール、格納容器にそれぞれ対応するイメージを得ることに成功した。原子炉圧力容器、格納容器、使用済み燃料プール内に保存されている核燃料の存在を可視化したのは世界初の成果という。

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