筑波大学は1月20日、遺伝子発現を調節する働きを持つタンパク質「MafB」が、動脈硬化の病態を悪化させることを発見したと発表した。動脈硬化マウスを用いた実験で、病変部のMafBの働きを抑えると病態が顕著に改善することも突き止めた。動脈硬化の新しい治療法の開発につながる可能性が期待できるという。
■タンパク質MafBが関与
動脈硬化は、酸化コレステロールなどの脂質が血管内皮下にたまり、これを取り除くためにやってきた免疫細胞のマクロファージがその場に蓄積することで血管が狭くなる現象。日本人の死因の第2位の心疾患、第4位の脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化だが、マクロファージが血管内皮下にとどまる詳しい仕組みはよくわかっていなかった。
研究グループは先にMafBを産生できないMafB欠損マウスを作製しているが、今回、血液細胞のみMafBが欠損した動脈硬化モデルマウスを作製し、動脈硬化の病態変化を調べた。
その結果、血液細胞MafB欠損マウスでは病変部の面積(脂質の蓄積)が少ないこと、このマウスの病変部ではマクロファージのアポトーシス(細胞死)が増加していて、アポトーシス抑制たんぱく質AIMの発現が著しく減少していることを見出した。
そこでMafBがどのようなシグナルを受けてAIMを制御しているかを検討し、これら一連の観察結果から、酸化コレステロールからのシグナルをMafBが伝達し、マクロファージのアポトーシスを阻害することで動脈硬化が進行することを突き止めた。
MafBがAIM遺伝子の発現を調節する機構は、今のところ動脈硬化病変部でのみ観察されていることから、このメカニズムをターゲットにした新しい動脈硬化治療法の開発が期待できるとしている。