零下90度の環境で3年近く生存するヒルを発見
―「ヌマエラビル」…凍結・解凍10回超でも生存
:農業生物資源研究所/東京海洋大学

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高い耐凍性をみせたヌマエラビル(提供:東京海洋大学・鈴木徹教授)

 (独)農業生物資源研究所と東京海洋大学は1月23日、零下90度の極低温下で3年近く生き続けるヒルを発見したと発表した。凍結と解凍の反復にも10回以上耐える。極低温下で生物体内の水の状態が生命活動にどのような影響を与えるかを知る手掛かりになり、細胞や臓器の冷凍保存など医学分野への応用にもつながると期待している。

 

■ふ化直後の固体や卵でも耐凍性

 

 高い耐凍性を持つことがわかったのは、カメ類に寄生するヒルの一種「ヌマエラビル」。研究チームが別の研究目的でクサガメを零下80度で半年ほど冷凍保存した後に解凍したところ、凍結前からカメに寄生していたと思われるヌマエラビルが動き始めた。ヌマエラビルだけを凍結・解凍しても、生存が確認できた。
 そこで、ヌマエラビルに加えて、その近縁種のヒルや、カメ類には寄生しない5種の淡水生ヒルも対象にして凍結・解凍実験を試みた。零下90度で凍結、24時間後に解凍して生存率を調べたところ、ヌマエラビルはすべての個体が生き残ったのに対し、他のヒルはすべて死亡した。ヌマエラビルは、ふ化直後の個体や卵でも同様の実験でも解凍後に生きており、卵はふ化することも確認できた。また、成体を液体窒素(零下196度)の中に24時間置いても全ての固体が生きていた。
 さらに、零下90度でどれだけ長期間生きていられるかを調べたところ、9カ月までは解凍後も100%生存。これ以上期間が延びると生存率は低下したが、最大で32カ月間生きることが確認できた。また、凍結・解凍の繰り返しには最大12回まで耐えた。
 昆虫などの中には、生命活動を極限まで低下させ、体内に凍結保護物質などを蓄積して極低温などへの耐性を高めるものがいる。しかし、ヌマエラビルの体内には凍結保護物質の蓄積は確認できず、通常の生理状態のまま体内の水が凍結したと考えられるという。
 研究チームは、ヌマエラビルの耐凍性が何によってもたらされているのかを具体的に明らかにする必要があるとして、今後は遺伝子レベルでの研究も進めることにしている。

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